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19.生まれつきの性分とは親不孝者めが ー盤珪(ばんけい)禅師ー

 盤珪禅師は江戸時代の臨済宗の禅僧です。ある日、禅師とひとりの僧とのやりとりがありました。僧が禅師に相談いたします。

 わたくしは、ふだんより何かにつけ短気でございます。わが師匠からもひたすら意見されますものの、これが生まれつきでございまして、なかなか直らないのでございます。はたして如何にいたせば直るものでございましょうか。ここに禅師の教えをいただきましてぜひとも直したいとこころよりお願いに参りました。

 そなたは実におもしろいものに生まれついたものだなあ。たった今もその短気というものがそこにあるのかな。あればさっそくにこの場へ出しなさい。たちまちに直してしんぜよう。

 いえ、今はございません。何かの拍子にひょこっと出てまいります。

 ならば、それは生まれついたものではない。何かのきっかけに自分から出てこさせているのではないのかな。場合によっては出てこないのだから生まれついての短気などあるはずがない。そなたが自分の都合で気分によって出してくるものを生まれつきと言うは、親へ身勝手な言いがかりをつける大の親不孝者である。世の中の人々はすべて、親より生まれついたものは「仏心」ただひとつなのだよ。あとはすべて我自身の気分で生み出したもので人のせいなどにするものではない。