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3.他の命を奪わずして生きられるだろうか

 十善戒というものがあります。

 仏教徒であればぜひとも守るべき十の戒めのことです。

 これを生活の中に生かしていくことで豊かな人生の指針とするものであり、僧侶だけでなく仏の教えを生活の基本とする者にとってとても大切なものです。

 このいちばん最初に「不殺生」戒があります。 

 他の命を奪うこと。最も愚かで恥ずべき行為です。それ故に、第一番に挙げられているのでしょう。

 命はこの世のすべてのものに平等に与えられたもので、寿命の長さなど誰にも分かりませんし、操作も出来ません。

 私たちはそのような多くの命に囲まれて生きています。

 どうでしょう、日々の生活の中で命の消滅を見ない日があるでしょうか。

 不快な虫を退治したのでいやな思いをすることもありません。今晩の焼き肉はとても美味しいし、新鮮な刺し身もなかなかいけます。これで明日も元気一杯。

 こうやって今日も私の命が他の命の消滅で長らえたわけです。

 これは、他の命を犠牲にしているのですからまさに殺生行為です。

 が、仏教ではそうは考えません。

 人間に限らず、命を保ち続けるのに他の命の犠牲は不可欠です。

 狩猟動物は必要以上の狩りをしないといいます。むやみに殺してしまえば獲物がいなくなり、やがて自分の命に影響してくることが分かっているからといいます。

 不殺生の教えは、人間もかくあるべしと言っているのです。

 大切なのは、自分の命が他の命によって保たれているということを認識し、自分にとっての限度を知り、こころから感謝するということです。

 命の犠牲が命を救うということはこの世の道理。

 むやみという暴走を防ぐために、お釈迦さまは私たち衆生の欲深き殺生行為を厳しく戒められているのです。