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11.最近、お月さまをゆっくりと眺めたことがありますか
「いやあ、今夜の月は本当にきれな満月だね」
「えぇ!今晩は月が出ていたのか。少しも気が付かなかったよ」
意外とある会話ではないでしょうか。
月は届くところすべてに光を照らしているのに、気付く人はそれほどいなかったりする。要は関心があるかないかの違いなのです。関心があるということはその人の心に住んでいることになります。
では眺めた時の感情はどうか。
お、月が出ているな。で済ます人もいるでしょう。じつにきれいな月だなぁ、と見とれてしまったり、今日うれしいことがあって見上げた月までが笑っているように見えたりする。
ここでも見ている人の心の中に住んでいる。
現代社会にあって私たちは何かと余裕のない生活を送っています。自分が精一杯で他人の事など認識している時間などありません。それが実情です。
新暦になって久しいのですが、かつては月の動きを基準とする旧暦で生活していました。まさしく生活の中に月があり人の心の中に月があったわけです。
現代人に月を眺められる心の余裕を取り戻せたら、身の回りの状況や人の心の痛み、喜びが把握出来るようになるに違いありません。そして自分もまた心の内を他人に分かってもらえる。
目の前の人は、苦しいがゆえに他人へ不快な態度をとっているのだと気付く。
親の愛情をただ口うるさいとしか受け止めてこなかった自分に目が覚める。
子供の心の叫びをわがままな反抗だと判断してきた思慮不足に気付く。
そうすれば毎日のように頻発している理解しがたい事件など発生しなくなるはずです。
愚行をもたらす怒りなど生じない。これが大慈悲の心なのです。